オークションの文面

■1台限り!ウォルナット+メイプル指板のソプラノ・洋なし■

 横浜在住の個人ウクレレ製作家・高橋と申します。これまでの作品は知人や周囲へ都度譲っていましたが、今後少しずつ全国へ紹介・販売していきたく、出品致しました。量産品ではない、手作りの良質なウクレレ(装飾を凝らした芸術品でなく、楽器として実用本位のもの)を、できるだけ低価格で提供することがモットーです。
 出品は、ソプラノサイズのオリジナル・洋なしシェイプ、ボディは良質のウォルナット単板(トップ・バックは1ピース)、ネックはホンジュラスマホガニー、力木も全てホンジュラス・マホです。指板はバーズアイメイプルで、5mmという厚めにセット、フレットは高さ/太さのあるギターサイズ(ギブソンタイプ)を採用し、音の輪郭やサスティーンに貢献しています。ネックシェイプはラウンド頂点を4弦側にずらした非対称のグリップで、適度な太さのため握りやすく、ギター弾きの方にも違和感がありません。スケールはソプラノにしては長い360スケールと長めにし、ピッチの正確さを助けています。ペグは後藤製の標準タイプ、ブリッジは良い桜材がありましたので、そちらを採用しています。
 最大の特徴は、ボディに後からネックを接着するのではなく、ネックとトップ板の接着から始める独自の工法。ネックは、サイド板をつきぬけボディ内部まで入り込んでいる為、構造上絶対に抜けず、またネックヒールブロックも不要となり、ハイポジションの演奏性を高めるだけでなく、サスティーン面でも好影響を与えています。他にも、ウクレレとしては薄めのボディ、角度をつけたネックセッティング、弦テンションのバランスをとったペグ穴位置、等々、音質バランスや演奏性で多々工夫を凝らした、ユニークなオールハンドメイド・ウクレレです。メーカー品にはない音をお楽しみください。
 写真の専用ダンボール箱に入れて、丁寧に梱包・発送します。今後も様々な材で、少しずつ出品していきますので、よろしくお願いします。(今回、同材のコンサートも出品しています)
 万一気に入らない場合、1週間以内であれば返品も受け付けますので、安心してお問合せください。購入後一年以内であれば、不具合の無償対応もします。今後製作予定についてのお問合せも、お待ちしております。(HPは5月頃開設予定です。)

=============================================

 この文面では、反応しないわけには行きません。しかも、希望落札価格が\35,000! このこだわった仕様でこの値段とは。 ともかく速攻で入札=落札しました。

楽器の感想

 ご本人との丁寧なやりとりの後で、楽器が到着。予想通りというか以上というか、実にきちんとした楽器でした。

 最初に確認したのは当然ながら音程ですが、非常に正確。オクターブピッチがちゃんと合っているのはもちろんですが、価格帯に関わらず、たいていのスタンダードウクレレが苦手とする、2弦の8フレット近辺のシャープも気になりません。これは、ご本人曰く、フレットは専用の器具を使わず手打ちにして、少しフラット気味にセットしているのだそうです。フレットの高さもあって、上級者であれば強く押さえて音程をコントロールできるが、最初からシャープしているとどうしようもないので、ということ。

 ブリッジもちゃんと音程微調整がされています。音程には徹底的にこだわっているのが判ります。

 そして、印象的なのがその音。自分の持っている楽器の中では、故人となってしまったハワイのビルダー、Troy Ozama のスタンダードに近い、明るく開放的な響きです。国産ビルダー独特の、芯のある丁寧な感じとは違った軽さ。音程の良さからコードの濁りも少なく、長めのクセのないサステインもグッドです。

 ほとんどの特徴はオークションの文面に説明されているのですが、非対称グリップやボディとのジョイント形状による弾きやすさも大したもので、自分の所持しているどのウクレレよりも良いプレイ感です。

 この上質な楽器が、送料などを込みにしても4万円足らずで手に入るというのは、ちょっと衝撃でした。

 自分が入手した楽器の欠点らしいものをあげつらうとすれば…

独特のペグ位置のために、3弦のチューニングがいささかしにくいこと、3弦のナット溝がやや狭かったこと(これは自分で削ればok)、仕上げの美麗さでは高額な楽器に一歩譲る、という点ぐらいでしょうか。こと音と音程に関しては、価格の倍以上の価値がある楽器だと思います。

 購入した当日、ウクレレ仲間との花見に持っていったところ、「これは知らしめる価値のある楽器なので、奥さんの店に置きましょう」ということになり、手元に常置できないのは残念なのですが、店にディスプレイすることにしました。

 作者のかたに絶賛メールをお送りしたところ、非常に恐縮していましたが、店にディスプレイしたその日のうちに、何人かのプレイヤーのかたが「あり得ないくらいちゃんとした楽器」などと感想を述べていきましたので、今後、絶賛の声はますます高まるばかりと思われます。

 試奏してみたいかたは、ぜひ「アルカフェ」においでくださいませ。(^_^)

K.Takahashi Standard Ukulele

この素敵なウクレレが、Web検索で引っかからないのはあまりに惜しいので、ブログでレビューを書くことにしました。

 このウクレレとの出会いは、Yahoo! オークションです。2007年3月21日の夜、オークションにアクセスしたところ、スタンダードとコンサートが一本ずつオークションにかけられていました。